多数決の弊害がプロジェクトの危機を生む

 さて実際に行った「砂漠からの脱出プロジェクト」はどうだったのでしょうか? こんにちは、コンセプトデザイナーの多ぁ望です。

 前回紹介したグループワークの実践結果をレポートします。

  • Try408:砂漠からの脱出プロジェクトでファシリテーション力を伸ばそう。
  •  
     このワークはこちらで紹介されている内容から、若干アレンジして実施しました。

     それはワークを途中で中断し、いくつかのチェック項目を確認してもらい後半のワークを行ってもらい、その違いを体験してもらおうという内容です。

     実際にワークを観察して、見えてきたことがあります。それが本日のタイトル。

    「多数決の弊害がプロジェクトの危機を生む」

     です。

  • Scheme484:ファシリテーターは合意をめざす役割。多数決では議論を方向付けることはできるが、感情を方向付けることはできない。

  • 1.グループワーク前半


     前回も紹介したとおり、このワークの目的は「壁を乗り越える手段を手にすること」としました。

     アイスブレイクでは、今日呼んでもらいたいニックネームとうまくいったことを発表。

     学生さんにとって、慣れないパターンだったようでちょっとニックネームに恥ずかしがっている様子でした。

     個人ワークで各自のアイテムのランキングを記録した後、なんのアドバイスもなくグループワークに突入。

    砂漠からの脱出プロジェクト2

     このチームのすばらしいところは、いきなり順に付けの話に入らなかったこと。終了時間を確認し、誰が時間をチェックするか、タイムキーパーを決め、どうやって進めるかをまず議論していました。

     個々に考え方をぶつけ合うと、どうやら2つの方針があることが見えてきました。

     それは「砂漠から離れるか」、「とどまって救助を待つか」。

     数名の意見から、とどまって救助を待つべきだという説得が繰り広げられました。

     そこでまず方針を決めようとAさんが発言。

     ここでAさんがこう切り出しました。

    「それでは、救助を待つ派のひとは誰ですか?」

     と挙手を促しました。この時点では7名中4名。一応、多数決では救助派で行くことになったようです。

     このあと、各自のトップ3をそれぞれが発表。

     そして共通する項目を残した結果、次の3つがポストイットで並びました。

     ①水
     ②塩
     ③ロングコート


     前半はみんながちょっと遠慮がちなムード。あまり議論もぶつりませんでした。意見のズレがあっても、すぐ引いてしまうような感じ。

    2.グループワーク後半


     さて、ここで「緊急速報(私が設定したケータイのアラーム)」が鳴りました。また、予定時刻の半分なのに。

     そしてシチュエーションの変更を伝えます。

    「生存者から新たな情報が入りました。墜落地点は予定飛行ゾーンから90km離れている模様。」

    「新たなアイテムが3つ見つかりました。それは45口径の銃、化粧鏡、ウォッカ2本。」


     そしてここで以下の4項目について、参加メンバーに答えてもらいました。

    砂漠からの脱出プロジェクト5


     ①あなたのチームリーダーは誰?

     参加者から選ばれたのは2名。ちょうど半々でした。ここでどちらかにリーダーを決定してもらいました。

     選ばれたリーダーは、観察していても議論をファシリテートしてきたAくんでした。予想通り。

     ②チームの目標は何か?

     これは「救助を待つこと」という見解は一致していました。しかしながら何日待とうとしているのかが不明確だったため、それを決めてもらいました。ここで目標は「3日間以内に、救助されること」となりました。

     ③選ぶアイテムの条件がチームで一致しているか?

     例えば、ケガ人がいるのか、いないのか?

     これはシチュエーションでは明確には表現されていません。するとあるメンバーから「自分達で決めればいい」という意見が。ここでケガ人はいないことで合意しました。

     ④目標が達成できなかった場合は?

     これを問いかけたとき、メンバーからは「なるほど!」という小さな返事がありました。おそらく考えてなかったんだと思います。

     こうやって、チェック項目を確認したあと、グループワークは大きく動き出しました。

    砂漠からの脱出プロジェクト3

     このようにポストイットを動かし、立ち上がりながら議論が白熱。

     このあと、無事にアイテムの順位が決定され、指定の時間がきて終了となりました。

    3.フィードバック


     さて、ワークが終了後は模範解答を確認し、個人の順位付けとグループで合意した順位付けを数値化してもらいました。

     これらを集計すると、模範解答に一致するとゼロ、そこから離れれば離れるほど数値が高くなっていきます。

     以前、私がセミナーで体験したときは75%の確立で、個人の結果よりもグループの結果が良くなる(数値が小さくなる)といわれていました。

     今回のチームは・・・。

     その逆。数名の個人の結果が模範解答に近かったのに、グループの結果がそれよりも離れてしまっていました。

     どうしてだったのでしょうか?

     最初の方向付けを決めたこの言葉に要因があったと思います。

    「それでは、救助を待つ派のひとは誰ですか?」

     実はこの発言のあと、逆の意見を持っていたメンバーの表情が若干曇ったのを見逃しませんでした。

     なんか言いたそうな表情をしていましたが、多数決で決まったのならしかたないか・・・。といった感じ。

     このとき、このチームの雰囲気は「議論よりも、順位付けを決めることが優先」という方向になってしまったように思います。

     最初に決まったこのトップ3の模範解答は()のとおり。

     ①水(3)
     ②塩(15)
     ③ロングコート(2)


     実はここの3つは、おなじ意見が複数出た結果、あまり議論されないまま、第4位以降の議論に移ってしまっていたんです。

     これが多数決の弊害。「しかたないか・・・。」という気持ちが議論を薄くしてしまいました。感情が伴っていません。つまり合意された結果ではないのです。

     問題なのは「塩」。昼間の気温が40℃を超え、汗で体内の水分が失われていきます。その結果、体内の塩分濃度はあがる一方。それに追い打ちをかけるような塩分の摂取は一番危険なわけです。だから最下位なのです。

     もう一つは後半で見つかったアイテムの「化粧鏡」です。

     これもキーアイテムだったんです。

     ⑬化粧鏡(1)

     こんな危機的状況で化粧する人なんていませんよね。でも救助には大いに役立ちます。太陽光を反射させることができますから。だから1位。彼らはそこを見落として13位としてしまいました。

     実は、議論の中で「多様性」という言葉を何度か使うBさんがいました。

    「パラシュートはいろんな使い方ができると思います。拡げれば目印にもなるし。」

     そのとおり。その視点があれば「化粧鏡」の重要性も気づいたのに。

     最後に学生さん達のアンケート回答の言葉を紹介しておきます。

    「一度、こうだと思ったことを、本当にこれでいいのか?と考えるべきだった。」

    「最初に個人で考えた順位づけの方が正解に近かったため、より自分の発言に耳を傾けてもらう必要があった。」

    「議論に積極的に参加するのも大切だが、一歩引いて周りを見れる能力が必要だと感じた。」


     というわけで、このチームは壁を乗り越える可能性は低くなってしまいましたが、これだけの気づきが得られたのなら「壁を乗り越える手段を手にすること」は十分に達成できたと思います。

  • Scheme484:ファシリテーターは合意をめざす役割。多数決では議論を方向付けることはできるが、感情を方向付けることはできない。
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